みなさまこんにちは!
TOANET株式会社の大畑です。
今回は、2019年3月に、大阪市が策定した「御堂筋将来ビジョン」を徹底調査いたしました。2037年を目標に、御堂筋の完全歩道化を目指すという将来ビジョンです。ビジョン策定に至る経緯や、実現に向けての段階的な取り組み、そして、ビジョン推進のための公民連携のイメージなどをお伝えします。*2022年12月25日時点の情報です。今後変更される場合があります。
目次
御堂筋の概要
御堂筋は、国道25号と国道176号から構成される、幅員44メートルの道路です。阪急前から難波駅前の間、約4.2キロメートルを「御堂筋」と呼んでいます。南行き一方通行の交通規制がかけられており、車道の両側には、側道(緩速車線)を設置し、沿道の建物に、車が寄り付きやすいよう設計されています。又、季節毎に変化するイチョウ並木や、高さのそろった沿道建物により、美しい風景を創り上げています。オフィスビルだけではなく、ブランドショップも経ち並び、近年には、御堂筋イルミネーションなどのイベントにも活用されています。ちなみに、現在は、大阪市長が道路管理責任者となっています。
御堂筋の変遷とビジョン策定に至る経緯
■御堂筋の変遷と交通量
道路拡幅以前の御堂筋は、道路幅6メートル、長さ約1.3キロメートルの、短く狭い道でした。それを、現状のスケールとしたのは、第7代大阪市長「關一(せきはじめ)」氏でした。工事にかかる莫大な費用、地下鉄工事(現在のOsaka Metro御堂筋線)と同時に行うという難工事の困難を乗り越え、1937年(昭和12年)5月11日に開通の日を迎えます。完成から30年後の1965年(昭和40年)頃には、マイカーブームが到来し、現在の道幅をもっても、交通混雑が見られるようになり、1970年(昭和45年)の大阪万博開催年に、双方向通行から一方通行に切り替えました。このように、御堂筋は、大幹線道路として大阪の経済を支えてきたのですが、近年は、国際社会のグローバル化や少子高齢社会化により、交通環境も変化してきています。下図の通り、1971年(昭和46年)と2012年(平成24年)とでは、交通量が4~5割減少しています。
それとは反対に、自転車量については、6~7倍までに膨れ上がっています。
歩行者数については、本町界隈では減少しているものの、新橋(心斎橋界隈)では、約3倍に増加しています。心斎橋界隈における増加は、海外からの訪日観光顧客数の増加により、大幅に増加したのではないでしょうか。(直近3年は、新型コロナウイルスの影響により、激減していると思いますが…。)このように、自転車数の大幅増、一部エリアでの歩行者増により、歩道エリア内において、歩行者が歩きにくいという問題が生じているのです。
■御堂筋将来ビジョン(歩道化構想)に向けての検討経緯
御堂筋については、1958年(昭和33年)から国が管理をしていましたが、道路と周辺のまちが一体となって、まちづくりを進めるべく、2012年(平成24年)に、大阪市に移管されることとなりました。近年、御堂筋沿道には、商業施設やホテルなど賑わい施設が進出することで、まちも大きく変化してきました。そのような状況下において、国と市が共同して、有識者、地元、経済界等で組織する検討会を設置し、今後の御堂筋の道路空間利用の在り方についての検討や社会実験を進め、2019年(平成31年)3月に、「御堂筋将来ビション」を策定するに至っています。
スケジュール | 項目 | 具体的内容 |
---|---|---|
2013年(平成25年) | 大阪市都市審議会専門部会設置 | エリアビジョンの検討 |
2013年(平成25年) | 御堂筋側道閉鎖社会実験 | 新橋~難波西口交差点の約1㎞の側道閉鎖 |
2014年(平成26年) | 御堂筋にぎわい創出社会実験 | 伏見町~平野町の東街区の側道を閉鎖し、にぎわいを創出 |
2016年(平成28年) | 御堂筋完成80周年記念事業推進委員会設置 | 御堂筋将来ビジョンの取りまとめ |
2018年(平成30年) | 側道を活用した御堂筋空間再編社会実験 | 千日前通~道頓堀川までの東側道路を閉鎖。最終整備形態に近い形を現地で再現 |
2019年(平成31年) | 御堂筋将来ビションの策定 | 2037年を目標として、難波から淀屋橋までを完全歩道化とするビジョンを策定 |
御堂筋将来ビジョンについて(完全歩道化構想)
車中心から、人中心のストリートへ転換することで、新たな体験ができる空間を生み出し、その空間を通じてストックした「人・モノ・資金・企業・情報」といった都市資源の交流を促し、新たな魅力や価値を創出。それらを世界に発信することで、大阪・関西の成長を目指しています。キーワードは、「大阪の顔に相応しい御堂筋」「新たな体験ができる御堂筋」「都市の成長を支える多様な機能を備えた御堂筋」。御堂筋完成100周年となる、2037年をターゲットイヤーとして、検討と実践を推進していくビションです。
将来ビジョンに向けての段階的な取り組み
■ファーストステップ⇒側道の歩道化(千日前通り~道頓堀区間)
御堂筋の交通量をみると、長堀通以南は以北に比べて自動車交通量が少ない一方で、歩行者交通量が多く、なかでも道頓堀周辺においては、訪日観光客も増加している為、歩道内における歩行者と自転車のトラブルが多い状態となっている。これより、まずは、千日前通りから道頓堀区間を先行して、側道の歩道化を実現した。⇒2020年完成済み
次に、道頓堀川北詰交差点以北のエリアについては、2025年の「大阪・関西万博」開催を目標として、側道の歩道化を進めるとしています。現在、道頓堀川北詰交差点から長堀通・新橋交差点までの区間を、歩道化に向け閉鎖・整備中です。大阪市のホームページによると、整備完成は2025年3月となっています。「御堂筋将来ビジョン」では、2025年に淀屋橋までの側道を歩道化とする計画となっています。新型コロナウイルスの影響で、遅れているのでしょうか。
■歩道エリアのゾーンイメージ
・通行ゾーン⇒歩行者と自転車が共存する空間(歩行者を優先ししながら利便性を維持)
・滞留ゾーン⇒ビジネスワーカー等が休息・交流できる空間
・利用活用ゾーン⇒周辺の情報発信、ビジネス展示会、カフェ等の交流空間
・多機能ゾーン⇒落ち着いた雰囲気を演出する緑や休息ができる空間
将来ビジョン推進に向けての「公民連携体制づくり」
将来ビションを推進するべく、公民相互で目指すべきビジョンを作成し、役割分担を明確化しています。
■公共主体の主な取り組み
【交通影響等の検証】車線減少に伴う渋滞や荷捌きなど、周辺道路や地域への影響を社会実験等により検証。
【御堂筋募金の創設】きめ細かい維持管理を実施するとともに、広く関心を持ってもらうべく御堂筋募金の創設に取り組む。
【民間が活動しやすい制度整備】都市の魅力向上、賑わい、交流の場を創出するための、特例制度を整備します。
■公民連携による主な取り組み
【道路空間と沿道建物とが一体となった賑わいを形成】壁面後退部と道路空間を一体的に活用することで、様々な利用に対応するオープンスペースを生み出します。オープンスペースを活用した継続的なまちづくりを進めるため、BID制度をはじめとした、事業費調達制度の導入を検討しています。
■民間主体の取組み
【民間による維持管理】清掃活動をはじめとした日常の維持管理と、花植え活動などに取り組み、美しい街並みを創出する必要があります。
【道路空間を活用したイベントなどの開催】沿道ビル壁面後退部などにおいて、マルシェやオープンカフェなどの情報発信をします。
まとめ
【完全歩道化構想】「大阪・御堂筋将来ビジョンを調査」いかがでしたか。今回、記事を作成するにあたり、「なんば」から「梅田」間を歩いてみました。今まで気づかなかったショップやレストランが目に入り、美味しいランチにも出会えました。そういった意味では、完全に歩道化とすることで、御堂筋の魅力がこれまで以上に発信され、多くの人々が集まり、そして、海外からの訪日観光客も増えることは、大阪にとって大変素晴らしいビジョンだと思いました。ただ、御堂筋の交通量は、約40年前から4割~5割程度減少したとはいえ、依然として少なくはありません。完全に歩道化されることで、必然的に堺筋や四ツ橋筋が混雑することになるのですが、本当に大丈夫なのでしょうか。より具体的なデータによるシミュレーションがあると、安心できますよね。現在の、自転車台数が激増している状況下では、側道の歩道化は、急務だともいえます。是非とも、多くの観光客が訪れる、2025年「大阪・関西万博」開催までに完了してほしいものです。そして、「御堂筋」が、ますます魅力あふれる大阪の担い手に変貌していくことを切に願っています。
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