【有形登録文化財】「大阪ガスビル」リノベ&複合ビル建設を調査

2023.06.25
アバター画像大畑清一郎

みなさまこんにちは!
TOANET株式会社の大畑です。
今回は、関西圏のインフラを担う「大阪ガス」本社、「大阪ガスビル」のリノベーションと、本社西側に所有する敷地に建設する複合ビル、「ガスビル西館」について調査しました。
*2023年6月19日時点の情報です。今後変更される場合があります。

大阪ガスビル南東側り
大阪ガスビル南館(2023年4月撮影)

大阪ガスビルディングについて

昭和8年(1933年)3月、当時格調工事中だった「御堂筋」の沿道に、大阪ガスビルディング(当時の呼称は「大阪ガスビルヂング」)、通称ガスビルが竣工。当時のガスビルは、御堂筋・平野町・御霊筋・道修町通を囲むブロックの南半分に、南館として完成。その後、昭和41年(1966年)に北館が増築され、現在に至っている。

ガスビル南館1933竣工時
南館竣工時は、現在の半分だけの建物でした。(大阪ガスプレスリリースより出典)

 

1966年北館竣工時
南館完成から、33年後に北館と一体化。(大阪ガスプレスリリースより出典)

ガスビル南館の意匠は、「過渡期的近代建築の好例」、「モダニズム建築の名作」等の評価を受け、御堂筋のランドマークとして君臨している。昭和41年(1996年)、都市ガスの需要拡大に伴い、本社事務所を拡張するべく、北館を増築した。北館は、南館の骨格を踏襲しながら、窓周りを軽快にするなど、より現代的なデザインとし、新旧の調和を図っている。その後、平成15年(2003年)、南館は文化財保護法に基づいて、国の「登録有形文化財」に登録されました。

現在のガスビル
歴史を感じさせる優美なフォルムです。(大阪ガスプレスリリースより出典)
大阪ガス゛る館銘板
大阪ガスビル館銘板「登録有形文化財」(2023年4月撮影)

■現ガスビル建築概要

南館 北館
竣工年 1933年(昭和8年) 1966年(昭和41年増築)
設計者 安井武雄(現 安井建築事務所) 佐野正一(現 安井建築事務所)
施工者 株式会社大林組 株式会社大林組
構造・規模 鉄骨鉄筋コンクリート造8階建 鉄骨鉄筋コンクリート造8階建
延床面積 18,422.90㎡ 27,700.56㎡

アクセス・ロケーション

『大阪ガスビル』は、京阪本線「淀屋橋」駅徒歩約5~6分、Osaka Metro御堂筋線「淀屋橋」駅徒歩約3~4分の場所に位置しています。また、Osaka Metro御堂筋線・中央線・四ツ橋「本町」駅へも徒歩5~6分の利便な交通アクセスです。

Google Map広域・一部加筆
周辺広域エリア図(Google Mapより出典・一部加筆)
Google Map狭域・一部加筆
周辺狭域エリア図(Google Mapより出典・一部加筆)

現在、『大阪ガスビル』の西側所有地は、立体駐車場等で有効活用しており、この敷地に、複合ビル『大阪ガスビル西館』が建設される予定です。過去に、タワーマンションのモデルルームが、入れ替わり立ち代わり営業していたことを記憶しています。

GoogleEarth俯瞰図・一部加筆
大阪ガスビル周辺俯瞰(Google Earthより出典・一部加筆)
Google Earth1・一部加筆
大阪ガスビル周辺(Google Earthより出典・一部加筆)

『大阪ガスビル』の周辺は、オフィスビルが林立するビジネスゾーンですが、南街区近隣には、浪速の氏神として多くの氏子崇敬者の崇敬を集める『御霊神社』があります。厄除け、縁結び、諸事円満成就、開運招福、商売繁盛、夫婦円満の神様として格別な尊崇を受けており、千年以上の歴史を有しているといわれています。詳しくは、ホームページをご参照下さい。御霊神社(ごりょうじんじゃ) Web Site [大阪・淀屋橋] (goryojinja.jp)

御霊神社
御霊神社(2023年4月撮影)

また、同じく南側近隣には、御堂筋最大級のビジネス拠点『オービック御堂筋ビル』が君臨しています。地上25階建て、高さ116m超で、「御堂筋の高さ制限解除第1号物件」となりました。オフィスフロア以外にも、ホテル、飲食、ホールなど多彩な店舗が入店。地上15階から25階部分には、三菱地所グループが運営する『ザロイヤルパークホテルアイコニック大阪御堂筋』が入っています。

【公式】ロイヤルパークホテルズ – 札幌・仙台・東京・横浜・名古屋・京都・大阪・神戸・広島・福岡 (royalparkhotels.co.jp)

オービックビル
『オービック御堂筋ビル』(2023年4月撮影)

オービック御堂筋ビル (midosuji-toyo-pm.jp)

今回計画の詳細について

今回の計画は、「大阪ガスビルディング」のリノベーションと、ガスビル西側の大阪ガス所有地に複合ビル「大阪ガスビル西館」を建設するものです。この事業は、大阪府の都市再生特別措置法に定める「都市再生特別地区」として都市計画決定されました。これにより、容積率の緩和を受け、敷地全体の高度利用を図り、また、ガスビル敷地と西側所有地との間にある市道(御霊筋)の道路上空を活用。両敷地の一体利用を図る計画としています。

位置図
配置図(大阪ガスプレスリリースより出典)
完成イメージパース
建物完成予想図(大阪ガスプレスリリースより出典)

■ガスビルの保存とリノベーション

現在建物の北側・南側・東側外観及び床面積の約85%の躯体が保存され、エントランスホール等の建築当時の趣を残す内部空間についても保存する計画です。また、南館と北館の接続部分を一部減築し、1階から8階までの「吹抜けアトリウム」が設置されます。

改修平面図
改修予定平面図(大阪ガスプレスリリースより出典)
ガスビルアトリウム
吹抜けアトリウムイメージ(大阪ガスプレスリリースより出典)

外観の改修予定については、次の通り。屋上の鉄塔(無線塔)等は、「ガスビル西館」に機能が移設されることにより、不要となる設備は撤去されるようです。少し、寂しいですね。

外観の撤去・回収範囲
外観改修予定図・鉄塔は撤去されるようです。(大阪ガスプレスリリースより出典)

 

■イノベーション拠点の整備

ガスビル、ガスビル西館および道路上空利用部の3階に、ワンフロアで繋がるイノベーション拠点が整備されます。ガスビルには、コワーキングスペースやシェアオフィスなどを設け、ガスビル西館には、多目的大ホールを整備。利用者の動線が交わる道路上空利用部分には、イノベーションスクエアが整備されます。運営には、Daigasグループのオープンイノベーションや、大阪ガス都市開発の100%子会社の京都リサーチパークの活用を予定しているようです。

建物用途構成
建物フロア概念図(大阪ガスプレスリリースより出典)
ガスビル西館デザイン・大阪ガスリリースより
建物低層部完成イメージ(大阪ガスプレスリリースより出典)

■レジリエンス、環境への取組

高効率分散型、ガスコージェネレーションシステムを採用し、エネルギーの高度利用が図られます。また、耐震性の高い中圧導管によりガスを供給することで、災害時にも電力・熱の供給継続が可能となります。近隣施設に対しても、平常時は空調用の熱を融通し、災害時には、電力を融通することを検討していとのことです。さらに、災害時には、ガスビル西館の大ホールを帰宅困難者の退避施設として開放されます。震度7クラスの南海トラフ地震の発生リスクが高まっている中、インフラ会社として、素晴らしい取り組みだと思います。

建築概要

ガスビル西館(新築) ガスビル(改修)
所在地 大阪市中央区平野町4丁目1番2号 ☚共通概要
敷地面積 約10,370㎡ ☚共通概要
延床面積 約136,000㎡ ☚共通概要
容積率 約1,200% ☚共通概要
高さ 約150m ☚共通概要
階数 33階建て 8階建て
主な用途 オフィス、商業施設 オフィス、商業施設
構造 鉄骨造(一部鉄骨鉄筋コンクリート造) 鉄骨鉄筋コンクリート造
竣工予定時期 2027年頃 2031年頃

まとめ

「大阪ガスビル」リノベ&複合ビル建設を調査!いかがでしたでしょうか。関西エリアのインフラ事業を担う「大阪ガス」が、再開発に乗り出すと聞いたときは、現在の「ガスビル」が解体されるのか!と、驚きました。しかしながら、西側敷地との一体開発で、現存の建物を残しての再開発事業と理解できたときは、正直安堵しました。現在、大阪市内では、多くのオフィスビルが、新たな建物として生まれ変わろうとしています。それはそれで、今後の大阪にとって素晴らしい事業だと思います。ただ、歴史ある建物を後世に残していくことも、重要で意義深いことではないでしょうか。今回の事業は、大阪ガスが、「ガスビル」の西側隣接地を所有していたからこそ、実現できたのかもしれません。ただ、歴史的建造物を残しながらも、高層オフィスと空中通路でつなぎ、一体化させる事業の実現。本当に素晴らしい事業だと思いました。完成後の建物は、2037年をターゲットイヤーとしている「御堂筋完全歩道化構想」と相まって、ますます魅力あふれる「御堂筋」の風景となることでしょう。

【完全歩道化構想】大阪・御堂筋将来ビジョンを徹底調査 – レポート – TOANETコラム

大阪ガス所有西側敷地
現在立体駐車場として利用されている西側所有地(2023年4月撮影)・ここに高層複合ビルが建設されます!